従業員の信頼を高める「健康への配慮」の力
産業保健師が調査結果から読み解く、従業員の信頼を高める健康経営
「採用しても人が定着しない」 「若手社員の離職が続いている」 「求人を出しても応募が集まりにくい」
このような課題を抱えていませんか。
給与や福利厚生の見直し、働き方改革などさまざまな取り組みが進められています。
実は課題解決のヒントになる調査がありました。
それは、企業が従業員の健康にどれだけ配慮しているかです。
公益財団法人日本生産性本部が実施した「第19回 働く人の意識に関する調査」では、従業員が感じる「健康への配慮」が、会社への信頼と最も強く関連していることが示されました
第19回 働く人の意識調査 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部
私は産業保健師として企業の健康支援に携わっていますが、この結果から多くのヒントや気づきがあります。
従業員の健康を支える取り組みは単なる福利厚生ではなく、離職防止、定着率向上、採用力強化につながる重要な人材戦略になり得るということです。
約6割の従業員が「会社は健康に配慮している」と評価
調査によると、「勤め先はあなたの健康に十分配慮をしているか」という質問に対して、
- 「そう思う」9.7%
- 「まずまずそう思う」49.7%
となり、合計59.4%が肯定的に回答しています。一方で、約4割の従業員は健康への配慮を十分に感じていないことも分かります。

公益財団法人日本生産性本部「第19回 働く人の意識に関する調査」より抜粋
企業として健康経営に取り組んでいたとしても、その取り組みが従業員に伝わっているでしょうか。
健康経営は「実施していること」だけでなく、「従業員が実感できていること」が重要であることを改めて考えさせられる結果です。
勤め先への信頼と最も強く関連するのは「健康への配慮」
今回の調査では、下記4つの要素と勤め先への信頼との関連性が分析されています。
- 健康への配慮
- 業績への不安
- 雇用への不安
- 収入への不安
その結果、最も強い関連性を示したのは「健康への配慮」でした。

関連性の強さは「クラメールの連関係数」によって数値化できる。連関係数は、0 から1 の間の値を取り、1 に近いほど関連性が強いことを示す。いずれの調査回でも、勤め先への信頼と最も関連性が強いのは健康配慮である。
公益財団法人日本生産性本部「第19回 働く人の意識に関する調査」より抜粋
つまり、従業員は会社の業績だけでなく、「会社が自分を大切にしてくれているか」を通じて企業への信頼を形成している可能性があります。
産業保健の現場で感じる「信頼」の正体
私が面談や健康相談の場で感じるのは、従業員が求めているのは特別な制度だけではないということです。
例えば、
- 健康診断後の丁寧なフォロー
- メンタルヘルス不調時の早期対応
- 管理職による声かけ
- 安心して相談できる環境
こうした日々の積み重ねが、「会社は自分を気にかけてくれている」という実感につながります。
そして、その実感こそが企業への信頼につながっていると感じます。
健康経営が離職防止につながる理由
離職の背景には、必ずしも給与や待遇だけでは説明できない要因があります。
実際には、
- 心身の不調を抱えながら働いている
- 慢性的な疲労が続いている
- 職場で孤立感を抱いている
- メンタルヘルス不調を相談できない
といった問題が潜んでいることも少なくありません。
反対に、
- 健康相談窓口の設置
- 治療と仕事の両立支援
- 休職者の復職支援
- 健康増進の取り組み
といった取り組みによって、従業員が安全安心して働ける環境があってこそ、仕事に対して「活力」「熱意」「没頭」できる肯定的で充実した心理状態であるワークエンゲージメントも高まります。
結果として、定着率向上や離職防止の効果も期待できます。
採用活動でも「健康を大切にする会社」が選ばれる時代
現在の求職者は、給与や知名度だけで企業を選ぶわけではありません。
別の調査でも、中小企業を受けた学生にその理由を尋ねたところ、「やりたい仕事に就ける」「会社の雰囲気が良い」のが上位1,2に挙がっています。
株式会社ディスコ キャリタス就活 2023 学生モニター調査結果(2022 年 10 月発行)202210gakuseichosa_kakuho.pdf (disc.co.jp)
つまり、従業員が働きやすい職場環境を整え、「雰囲気が良い職場」が選ばれるということです。
採用募集内容では、下記のような表示を重視する傾向があります。
- 健康経営への取り組み
- ワークライフバランス
- メンタルヘルス対策
- 育児や介護との両立支援
- 働きやすい職場環境
健康への配慮は、従業員満足度の向上だけではなく、採用活動における企業価値の向上にもつながる重要な要素と考えられます。
まとめ|健康支援はコストではなく人材への投資
今回の調査からは、企業の健康への配慮が従業員の信頼との強い関連が示されました。
人材確保が難しい時代だからこそ、「健康は個人の問題」ではなく「企業が支える経営課題」として捉えることが重要です。
健康経営や産業保健活動への取り組みは、従業員の会社への信頼を高め、離職防止や定着率向上、さらには採用力強化にもつながります。
健康経営を「コスト」ではなく「人材への投資」として考えることが、これからの企業には求められているのではないでしょうか。
出典:公益財団法人日本生産性本部「第19回 働く人の意識に関する調査」(2026年7月30日公表)第19回 働く人の意識調査 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部
健康経営/離職防止/定着率向上/採用力向上/ワークエンゲージメント/メンタルヘルス対策/産業保健師/企業の健康管理/人材定着/働きやすい職場づくり
代表 野口 有美子 (のぐち ゆみこ)
事業内容 企業等に定期健康診断後の保健指導、健康テーマの研修、健康経営の相談、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援、産業医や主治医・地域との連携等、健康管理のサービスの提供。働く人々の疾病予防、健康の維持増進。
保有資格 保健師 看護師 養護教諭一種 第一種衛生管理者免許 健康経営エキスパートアドバイザー(認定番号 EX23002053) メンタルヘルス対策・両立支援促進員 認定フェムテックエキスパート
職歴
2002年 公益財団法人石川県成人病予防センターの保健師として、4年間石川県内の自治体や企業の健康診断、保健指導に従事。
2006年 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)金沢健康増進センターの産業保健師として17年間、社員約3,000人を支援。
各種健康診断、保健指導、健康相談、メンタルへルス支援、健康増進企画運営、健康経営など新入社員からシニア社員まで幅広く社員の健康管理を経験。
2023年4月より 石川産業保健総合支援センター 登録保健師
2023年5月より 野口保健師事務所 開業
2024年4~8月 石川県立看護大学 臨時助手
2024年4月より 金城大学公衆衛生看護学専攻科 産業保健活動論 非常勤講師
所属団体
日本産業衛生学会 産業保健看護部会 日本看護協会 石川県看護協会 石川県中小企業家同友会 金沢市倫理法人会 日本開業保健師協会 NPO法人禁煙ねット石川 産業保健オンラインコミュニティ(通称COEDOH) NPO法人子育て支援 はぐはぐそのままでいいよ 女性起業家交流会 in HOKURIKU(JKK)
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