N.Rさん 60代 男性 会社員
N.Rさんはすい臓がんが見つかり、治療後に職場復帰をしました。以前より糖尿病も治療中でした。
私は、治療と仕事の両立支援のため、現在の治療や主治医からの就業上の配慮有無、業務内容などを確認しました。お話を伺うと、身体状況では夜勤や現場仕事は控えた方が良いにも関わらず、大丈夫だからと業務に就くこともありました。管理職でもあり職場からは言いづらい立場の方でした。
私は医療職だからと、医師の指示に従うこと、無理はしていけないということを一方的に伝えました。
何度かお話を伺ううちに、もともと真面目な方であり、病気だからと仕事をおろそかにしたくない、後輩に伝えたいという気持ちがあるからと感じるようになりました。
N.Rさんは「あと何回桜が見れるのかと思う」、「治療して5年経った、5年生存率が低いから」、「検査したら影があって、転移かもしれない」と不安な気持ちを話されることもありました。
「野口さんは何時間でも話をきいてくれる」と言われたことがありました。
当初の私は、大病をされたのだから職場復帰したといえども、きちんと治療し決して無理はさせてはいけないと、そればかり意識していました。それはN.Rさんの気持ちを汲んではいませんでした。
今思うと、あとどのくらい余命があるのかわからない、それまでできるだけ仕事がしたい、自分の仕事の経験を後輩に伝えたい、というのが本音だったのかもしれません。
N.Rさんにとっては、不安な気持ちを受け止め、話をきく、寄り添うことが産業保健師にできることだったのかと感じました。
がんと仕事の両立支援での経験から
がんと言っても様々な部位や病状、治療方法も多岐にわたります。そして、本人が大切にしたいこと生き方も多様化しています。
両方をすり合わせ、がんと仕事を両立するには何ができるか、本人、主治医や産業医、看護師、保健師、関係者が連携してすすめていくことが大切と感じます。
治療と仕事の両立支援ナビ ポータルサイト (mhlw.go.jp)
代表 野口 有美子 (のぐち ゆみこ)
事業内容 企業等に定期健康診断後の保健指導、健康テーマの研修、健康経営の相談、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援、産業医や主治医・地域との連携等、健康管理のサービスの提供。働く人々の疾病予防、健康の維持増進。
保有資格 保健師 看護師 養護教諭一種 第一種衛生管理者免許 健康経営エキスパートアドバイザー(認定番号 EX23002053) 両立支援コーディネーター 認定フェムテックエキスパート
職歴
2002年 公益財団法人石川県成人病予防センターの保健師として、4年間石川県内の自治体や企業の健康診断、保健指導に従事。
2006年 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)金沢健康増進センターの産業保健師として17年間、社員約3,000人を支援。各種健康診断、保健指導、健康相談、メンタルへルス支援、健康増進企画運営、健康経営など新入社員からシニア社員まで幅広く社員の健康管理を経験。
2023年4月より石川産業保健総合支援センターの登録保健師として50人未満の中小企業の健康管理を支援中。
2024年4月より 石川県立看護大学 臨時助手
2024年4月より 金城大学公衆衛生看護学専攻科 非常勤講師
所属団体 日本産業衛生学会 産業保健看護部会 日本看護協会 石川県看護協会 石川県中小企業家同友会 日本開業保健師協会 NPO法人禁煙ねット石川 産業保健オンラインコミュニティ(通称COEDOH) 女性起業家交流会 in HOKURIKU(JKK)
学会発表
第87回日本産業衛生学会「イコちゃんカップ」ウォークラリーの 拡大定着に向けた取り組み
2014年日本産業衛生学会の生涯教育ガイドラインGood Practice事例に記載「イコちゃんカップ」ウォークラリーの拡大定着に向けた取り組み
第92回日本産業衛生学会 35歳時保健指導前後の定期健康診断結果の変化からみた若年支援の効果について
第94回日本産業衛生学会 A事業所の喫煙率低下及び受動喫煙防止意識向上のための喫煙対策5年間の取組み