事業所と一緒に取り組んだ喫煙対策5年間

喫煙の社会環境

喫煙を取り巻く環境は、マナーを守ってタバコを吸う時代から、ルールを守ってタバコを吸わない時代へと移行してきました。

タバコ販売価格の値上げも何度もあり、公共施設は禁煙になりました。

健康経営でも喫煙対策は重要項目です。

A事業所は50年前の喫煙状況?

当時支援していたA事業所は、11箇所の分散職場で約150名を抱えていました。

喫煙状況が変化している社会状況でも、2016年度A事業所喫煙率は平均4割、中には8割と50年前の日本のような職場もありました。A事業所は、エリア内でも高い喫煙率でした。

社会的に喫煙しにくい環境に移行しているにもかかわらず、11か所中8か所が喫煙率20%を超えていました。

このことから喫煙率低下に向けた取組みの必要性を感じました。

受動喫煙防止意識の薄さ

ある喫煙室は、職場内社員が利用する休憩室の一角にあるにもかかわらず、ドアが解放されたままでした。理由は「事務所の電話の音が聞こえないから」という大変驚くべきものでした。

受動喫煙防止への対策の必要性を感じました。

喫煙率低下及び受動喫煙防止への意識向上のための対策の開始

A事業所の喫煙率低下及び受動喫煙防止に対する意識の向上に向けて職場と共に取組んだことを紹介します。

2016~2020年取組み前後の喫煙率の変化

2016~2020年の喫煙率の推移はA事業所41%から30%に推移し、エリア全体に迫るまで減少しました。

2016年までの喫煙対策

2016年以前より社員個人には、定期健診で呼吸機能検査、COPD疑いへの受診勧奨をしていました。

健康保険組合の禁煙サポートプログラムは希望者が参加できました。

組織には健診結果集計等を所長に報告していました。

2017年取組み開始時

2017年に喫煙対策についてA事業所長に説明しました。

所長は「喫煙室はコミュニケーションの場という認識、所内で気運が高まっていない。時間をかけて取り組んでほしい」と要望されました。

喫煙室の基準満たさず、その後の環境変化

喫煙室設置の効果の確認のため空気環境の測定を行いました。

測定結果は、境界面風速0.20 m/s未満、粉じん濃度は基準の4倍を超えていました。内部も外部も受動喫煙のおそれがありました。

安全衛生委員会の審議で屋外喫煙所案もありましたが、実現されませんでした。

しかし喫煙室のドアには解放厳禁と貼り、閉められるようになりました。

誰でも参加 タバコクイズでイベント

受動喫煙防止の意識向上を目的に、喫煙有無に関わらず誰でも参加できるタバコクイズでイベントをしました。

タバコクイズと資料展示を3日間、保健師が在室しました。

クイズの「タバコを吸うとストレス解消になるか」というに、喫煙者全員が「ストレス解消になる」と回答しました。認知のゆがみを感じました。

喫煙有無にかかわらず参加したことで、タバコを吸わない人の意見、禁煙した体験談を伺うことができました。

2020年 原則屋内禁煙

健康増進法一部改正で原則屋内禁煙となりました。

A事業所も屋外に喫煙所を設置しました。

しかし健康診断期間中は不特定多数が受動喫煙となるため敷地内全面禁煙としました。

事業所が自ら案内表示していました。

社員側も「今は吸えないね」と快くルールを守っていました。

2020年禁煙成功者へのインタビュー

A事業所長から禁煙者が何人もいると産業医に報告がありました。

禁煙継続や禁煙希望者の参考となると考え、1年以内に禁煙した社員8人のうち6人にインタビューしました。

禁煙のきっかけはいくつかの理由が重なっていました。

「吸う場所が限られる」は、回答者の半数おり、屋内禁煙の効果も感じられました。

特徴的理由として「職種を続けられるか不安になった」という理由もありました。

実際に喫煙対策を継続したA事業所は、エリア全体よりも、1年以内に禁煙者の割合が多い傾向にありました。(2020年度の健診結果より比較)

この内容は安全衛生委員会で報告し、良い環境変化を共有しました。

その他サポート

社員と会う度に喫煙について積極的に声をかけ話題にしました。

所長に健診結果集計等の報告時に喫煙状況について情報共有しました。

2017から2020年、安全衛生委員会の場を利用した衛生講話で喫煙対策のテーマを実施しました。

時系列変化

2016年以前、組織では喫煙室はコミュニケーションの場として寛げる環境でした。

社員も電話の音が聞こえることを優先し分煙されていませんでした。

「タバコの害の研究結果は改ざんされている。」等ゆがんだ認知もみられました。

取組み以降は職場から、喫煙率目標達成のための取組みや屋外喫煙所の設置などの相談が寄せられるようになりました。

2019年には10年以上COPD疑いの紹介状発行の社員が受診しました。

支援を継続し徐々に組織や個人の変化がみられました。

喫煙対策を継続して

喫煙対策について組織と共有していく中で、喫煙対策の視点が養われ、社会的流れも加わり、社員個人も意識変化がみられました。

支援以前からも個別の禁煙指導はありましたが、A事業所は6割が50歳以上で喫煙歴も長く、個別アプローチだけでは難しいと感じていました。

しかし喫煙の有無にかかわらず、社員全体に多方面から繰り返し時間をかけて取り組むことが、禁煙への動機づけ・喫煙率低下・喫煙環境の変化・受動喫煙防止意識への向上につながったと考えられました。

A事業所の社員はトップダウンや法令遵守の意識が高い傾向があると思われることから、法改正の屋内禁煙化はA事業所の喫煙率低下及び受動喫煙防止への意識向上をすすめる後押しになったと考えられました。

 

第94回日本産業衛生学会 A事業所の喫煙率低下及び受動喫煙防止意識向上のための喫煙対策5年間の取組み の学会発表より

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