K.Mさん 20代 男性 会社員
K.Mさんは自身でこころの不調を感じ、「話をきいてほしい」と来られました。
当時、私はメンタル不調の対応は慣れておらず、ほぼ実習での経験しかありませんでした。私につとまるのかと不安でしたが、困っておられるのだから、まずきいてみることにしました。
K.Mさんは現在の体調について、以前のようにやる気が起こらない、仕事がうまくいかないと思っている、疲れが取れない、眠りが浅い、食欲は変わらないなど話されました。
私は、話を聴く基本である、うなずく、相槌をうつ、話の内容を繰り返す、内容を確認しながら1時間ほど対応しました。終了後、うまく対応できなかったと感じていました。
後日、K.Mさんが来られ、すっきりした表情で「色々考えましたが、退職することになりました。先日は話をきいていただきありがとうございました。」と話されました。
K.Mさんがすっきりした表情であったことが印象的でした。うまく対応できなかったと感じていたことに反して、K.Mさんにとっては「話を聴く」ということが受け止めになり、ご自身の考えの整理につながったと感じます。
誰しも相談されると、「何か良いアドバイスを」と使命感を感じます。タイミングによっては効果的な場合もありますが、特にこころの不調の相談に関しては、「話を聴く」ということが大切と実感しています。
専門職だけでなく、管理監督者にとっても「聴く」ことは大切です。
メンタルヘルス対策 管理監督者の役割「ラインによるケア」
管理者が部下の相談に対応する際にも「話を聴く」ということが大切です。
下記のURL 厚生労働省 職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~p16~記載があります。000560416.pdf (mhlw.go.jp)
管理監督者による部下への接し方
管理監督者の部下への接し方のポイントは「気づく」「聴く」「つなぐ」です。
気づく
「いつもと違う」部下に気づくことです。日頃から関心を持って接し、「いつも」について知っておくことです。
「いつもと違う」部下の様子例
○ 遅刻、早退、欠勤が増える
○ 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
○ 残業、休日出勤が不釣合いに増える
○ 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
○ 業務の結果がなかなかでてこない
○ 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
○ 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
○ 不自然な言動が目立つ
○ ミスや事故が目立つ
○ 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする
聴く
管理監督者は、部下が相談しやすい環境や雰囲気を整え、自発的な相談に対応するよう努めなければなりません。
部下の話を聴くことは、職場の人間関係や部下の資質の把握、心の健康問題の早期発見・適切な対応という観点からも重要です。
話を「聴く」ことは簡単なようでいくつかコツがあります。
管理監督者が適切な対応ができるよう、話を聴く技術習得の研修開催なども効果的です。
つなぐ
「いつもと違う」部下の背後に病気が隠れている可能性があります。
「いつもと違う」と気づき、話を聴き、専門職のところへ行かせる、あるいは管理監督者自身が専門職に相談に行く、「つなぐ」ことです。
事業場によって、産業医、保健師、看護師、公認心理師、臨床心理士等が配置されている場合は相談してください。
産業医や専門職が事業場にいない場合には全国の産業保健総合支援センターにて支援してもらえます→さんぽセンター Webひろば (johas.go.jp) 「最寄りのさんぽセンターを探す」をクリックして地域をお選びください。
決して管理監督者が一人で抱え込まないことです。
代表 野口 有美子 (のぐち ゆみこ)
事業内容 企業等に定期健康診断後の保健指導、健康テーマの研修、健康経営の相談、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援、産業医や主治医・地域との連携等、健康管理のサービスの提供。働く人々の疾病予防、健康の維持増進。
保有資格 保健師 看護師 養護教諭一種 第一種衛生管理者免許 健康経営エキスパートアドバイザー(認定番号 EX23002053) 両立支援コーディネーター 認定フェムテックエキスパート
職歴
2002年 公益財団法人石川県成人病予防センターの保健師として、4年間石川県内の自治体や企業の健康診断、保健指導に従事。
2006年 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)金沢健康増進センターの産業保健師として17年間、社員約3,000人を支援。各種健康診断、保健指導、健康相談、メンタルへルス支援、健康増進企画運営、健康経営など新入社員からシニア社員まで幅広く社員の健康管理を経験。
2023年4月より石川産業保健総合支援センターの登録保健師として50人未満の中小企業の健康管理を支援中。
2024年4月より 石川県立看護大学 臨時助手
2024年4月より 金城大学公衆衛生看護学専攻科 非常勤講師
所属団体 日本産業衛生学会 産業保健看護部会 日本看護協会 石川県看護協会 石川県中小企業家同友会 日本開業保健師協会 NPO法人禁煙ねット石川 産業保健オンラインコミュニティ(通称COEDOH) 女性起業家交流会 in HOKURIKU(JKK)
学会発表
第87回日本産業衛生学会「イコちゃんカップ」ウォークラリーの 拡大定着に向けた取り組み
2014年日本産業衛生学会の生涯教育ガイドラインGood Practice事例に記載「イコちゃんカップ」ウォークラリーの拡大定着に向けた取り組み
第92回日本産業衛生学会 35歳時保健指導前後の定期健康診断結果の変化からみた若年支援の効果について
第94回日本産業衛生学会 A事業所の喫煙率低下及び受動喫煙防止意識向上のための喫煙対策5年間の取組み