形式的な雇入れ時の健康診断ではなく 新入社員のパフォーマンス向上に活用しませんか

人事総務担当者から、このような相談がありました。

「今年入社した社員が白血病だと他の社員からきいた。工場で仕事をさせているけど、大丈夫なのか、病気のことをきいてもいいのか。どう対応していったら良いでしょうか。」

対応するひとつに、雇入れ時の健康診断がポイントになってきます。

まず雇入れ時の健康診断についてどういった意味があるのかご紹介していきます。

形式的に雇入れ時健診をしていませんか

雇入れ時健康診断は、形式的ではなく、労働者の安全と企業のリスクマネジメントの両面で不可欠です。

雇入れ時健康診断を受けさせていますか

新しく、常時使用する労働者を雇い入れる際に、事業者が必ず実施しなければならない健康診断です。

入社時点での健康状態を把握するために重要な健康診断です。

法的根拠

  • 労働安全衛生法 第66条
     「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」

  • 労働安全衛生規則 第43条(雇入時の健康診断)
     常時使用する労働者を雇い入れるときは、既往歴、胸部X線検査、血液検査など11項目について医師による健康診断を行うことが義務づけられています。
     ただし、直近3か月以内に同等の健康診断を受けており、その結果を提出した場合には省略可能です。

実施の意義

労務リスクの回避・労働災害・健康トラブルの予防

 業務に支障のある健康問題があるのかどうかを事前に把握できます。適切な配置や業務内容の調整につなげられます。

現在の業務に起因したかどうか

 入社後に発見された健康問題が「入社前から存在していたのか」「業務に起因したのか」を明確にするための証拠となります。

企業コンプライアンスの徹底

 法令遵守はもちろん、社員の安全配慮義務を果たすことが社会的信頼につながります。

人事労務担当者の実務ポイント

  • 対象者の確認
     正社員だけでなく、週に30時間程度勤務する契約社員やアルバイトも「常時使用する労働者」に該当する場合があります。

  • 実施のタイミング
     「雇い入れるとき」に行い、遅くとも入社から3か月以内が望まれます。

  • 費用負担
     事業者負担が原則です。

  • 健診結果の取扱い
     結果は必ず本人に通知し、必要に応じて就業上の配慮を行うことが求められます。

  • 書類保存
     健康診断個人票は5年間保存が義務づけられています。

相談のその後

雇入れ時健康診断の既往歴の欄に白血病と記載がありました。

ですので、既往歴の欄に気になる病気があれば、業務の配置や配慮のために必要であることを説明し、仕事をするうえで必要な配慮があるか、ききます。

「きいても良いのか」と個人情報が気になる担当者もおられます。興味本位できくのではなく、会社の安全配慮義務のためですので、差し支えはありません。

人事総務担当者が本人に確認したところ、過去に白血病だったが、現在は治療が終了しており、現在の仕事で配慮が必要なことはないようです。

新入社員のマネジメントに活用しませんか

新入社員の既往歴については、触れていいのかと迷ってしまうことがあります。

会社の安全配慮義務のため非常に重要な確認となります。また、社員にとっては会社が社員の健康を大切にしていることが伝わります。

新入社員のサポートに困った相談に対応して

健康情報をきいてもよいのか、職場としてどう対応すれば良いのかと迷うことがあります。

この事例のように、ひとりで抱えこまず、個人情報に留意し関係者に相談することが重要です。

当事務所では新入社員の支援をしています

新入社員のこころとからだの健康を把握し、マネジメントすることは人材確保の始まりです。

雇入れ時健康診断の説明や体調の確認を保健師がします。保健師がきくことで話しやすく、人事労務担当者とも連携しやすくなります。

まとまって新入社員がいる場合には健康教育も承ります。

当事務所へのお問い合わせはこちらから→https://noguchip.com/contact

企業内に産業医や保健師がいない場合の無料相談窓口

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石川県の石川中央地域産業保健センターの登録保健師として野口保健師事務所 代表 野口 有美子は所属しております。
石川中央地域産業保健センター|一般社団法人 白山ののいち医師会